2010-03-09 清宮パートのみ、膨大化
清宮パート
J政府はOSの更新時期に来ていた。政府の直属秘匿機関「近衛府」はこのOS改編期に12年ぶりの緊張を迎えていた。近衛府勤続14年の清宮(セイミヤ)は、OS更新のプロジェクトリーダーとしてある重要な任務を任されていた。
その任務とは「12年に一度の少年」の確保である。
政府は国有財産向上のため、12年に一度生産者であり消費者である国民に新たなOSを提示することを義務としていた。
しかし、それは国民にまったく知らされていない義務であった。
「12年に一度の少年」は国立保護地区の島で生まれ育った少年である。
12年ごとに島は少年が神隠しにあうことを黙認していた。
政府からの多大な恩恵を授かるために。
こうして12年ごと少年は政府から確保され行方不明になっていた。
しかし12年前のOS更新時、J政府史上空前の事件が起こった。
少年確保未遂事件である。
当時の近衛府は総力を挙げて少年確保を試みたが、何者かの手によって隠匿されてしまった。
近衛府の当時のトップと担当閣僚は辞任。
そして問題は、
劣化したOSを24年に渡り運用してきた事実である。
今回絶対ミスは許されない。
清宮は用意周到に作戦を開始していた。
そして密かに12年前の事件を解決するべく、清宮はいくつものオペレーションを進めていた。
清宮は島の歴史と文化、風習、風俗を調べ上げ、地理的要因と人員的要因の2つからなる島の全貌をつぶさに脳に叩き込んでいた。
失敗の許されないオペレーションは万が一に備え、あらゆる手段を講じていた。
今回確保する少年の名前はカナエといった。
清宮は12年前の取り逃がし事件を思い浮かべた。
あの時のオペレーションも問題はなかった。
ただ近衛府をはるかに上回る用意周到な計画が持ち上がっていた。
そしてその要因は近衛府よりも密な島の情報と、詳細な地理情報がもたらしたものだと清宮は考える。しかし、それを実行できるものは限られているのも事実である。
たとえば村の反抗。
しかしその線はすぐに消された。
近衛府の村民動向の調査結果は、村民が島に近付くことを許していなかったし、その人数はすべて近衛府に管理されていたからである。
そしてひっそりと島に近付く不審船や人影も1カ月前からの24時間体制で、厳重に監視されていた。もちろん侵入の形跡はいっさい見つからなかった。
では、12年に一度の少年はどこに消えたのか?
近衛府は首をかしげた。
大掛かりな山狩りのオペレーションも不発に終わり、
少年の遺留品も一切見つからなかった
近衛府は1年半に渡る捜索を中止し、OS更新は運用部のバージョンアップで凌ぐこととなった。
当時の幹部から上のトップ連中は責任をとって辞任。
12年後のOS更新に向けて、
監視体制の強化を図って終了。
清宮は12年間の島関連の報告書をここ半年読み込み、
また現地にも飛んでいた。
清宮は淡々と読み込んでいくうちに一つの疑問点が浮かんだ。
これだけのオペレーションで死角ができるところといえば、
もはや近衛府サイドしかない。
要するに裏切り者が内部に忍び込んでいる、という結論しかない。
だが特Aクラスしか入府できない近衛府に、いったい誰が?
清宮は窓を眺めた。
清宮は現地に飛んだ。
5人小隊のチームが各方面から投入された。
清宮はすべての連絡が入ってくる統括本部にいる。
統括本部といってもあくまでも隠匿任務のため、大掛かりな編成を組むことは許されていない。
清宮は報告を聞いている。
村民は12年前と同様隣の島に移され、確保が終わるまでの間すべての動きを近衛府に把握されている。
外部からのアクセス経路をしらみつぶしに監視下に置き、
現在カナエの動きのみが報告されている。
カナエの他2名の少年が一緒に遊んでいる。
カナエとの引き離し作戦に失敗したというもの。
清宮は嫌な汗をかいた、12年前と一緒だ。
各方面の報告が終わると、
清宮は自分の目でオペレーションの確認を行うため、島を回り始めた。
島での足取りは軽かった。
清宮は頭の中枢まで島の地理、経路図などを叩き込んでいたため、目をつぶってでも回れる。もともと大きな島ではないのでローラー作戦をかけることもできる。
現在のカナエは少年2人と海辺にいる。
確保は明日早朝7時である。
その様子を崖の上から眺める。
清宮は監視体制の徹底を告げて小隊を本部に返した。
誰もいなくなった崖の突端。
背後に何者かがいる。清宮は気付かないふりをしてサイレント式のベレッタに手をかける。
振り返った瞬間、
一つの刃が目の前までくる。
その瞬間ベレッタでかわす。
へ「久しぶりだな、オウシン。いや今は近衛府運営班のプロジェクトリーダーの清宮か・・・」
清「お前は・・・・・」
へ「ヘンザン。ヘンザン・アラタナス。この名前を言うのも久しぶりだ」
清「ヘンザン?お前どこに姿を消してた」
へ「近衛府のオペレーションには引っかからないぜ、俺は島の中枢にいたよ・・・・・この24年間」
清「・・・・・」
へ「お前はどうなんだ?マジで近衛府に魂売ったとかは言わないよな?」
清「俺はシステムの全容を解析するために組織に入った。だが12年前の事件以来秘匿情報は近衛府内にも開示されることはなかった。俺は必死になって職務に没頭し、この少年確保のオペレーション担当まで上り詰めた。そして多くの資料に目を通すことができた。システムの実態をもう少しで把握するという時に気付いたんだ、こっち側が面白いってな。ハサンには悪いが国を動かすというのは途方もなく魅力的だ。そして過去を断ち切るには十分な年月だったともいえる」
へ「そんなことだろうと思ってたぜ。お前の構築したオペレーションは悪趣味極まりない、隙というやつがないからな。むし心の底から楽しんでないと作り上げられないものだ・・・・・。オウシン、カナエを連れてくのか?」
清「それ以外選択肢があるのか?」
へ「・・・・・明日のオペレーション楽しみにしてるぞ」
清「っといってやすやすと逃がすと思うか?」
そういうと清宮はいきなりベレッタを放った、しかしヘンザンはその動きを読んでいたとみて瞬時にかわす。清宮は驚いた。確実に銃をよけていたのだ。
へ「なにもただ無為に過ごしてきてないぜ、この24年間。システム以上の力を身につけないとやられるからな」
清「システム以上だと?そんな幻想あるわけないだろ」
へ「OSこそ幻想の塊だ。現に24年間生き続けてきただろう?人間はレールの上を歩かされているようで、案外そうでもないんだよ。それに気づけたのが収穫だな。そしてお前もだ、オウシン。独立した存在なんだよ」
清「馬鹿言え、カナエは黙示録の主要部分を解析する少年だ。これが明かされることで初めてシステムの全貌が明らかになるんだ。お前はそれを知りたくないのか?」
へ「旧態依然のシステムには何ら興味はない。このシステムはただ繰り返しているだけだぜ、同じこと同じ場所同じような人間を作り上げることをな。俺が興味あるのは人間一人ひとりに流れている物語だ」
清「物語とは詩人だね、お前自身の24年間の物語でも聞かせてもらおうか?」
へ「これだけは言っておく、システムの中で生きられるのは主人公だけだ。自分という物語の主人公と、システムの中枢部分でコントロールしているシステムの主人公。いわゆる近衛府のやつら、J政府のやつらのほんの一部だけだ。そのシステム、明日からやめます、ということで決着付けてやるよ。お前の描く物語をな」
そういうとヘンザンは姿を消した。
そして清宮は虚空を眺め、カナエを眺め、24年前に思いを馳せた。
清「まったく、面白いやつだ・・・・・」
2010-03-09 19:18 Permalink | コメント(0) | トラックバック(0)